オートマティックは素敵。
人の意図を読み取れないのではなく、読み取るのにとにかく時間がかかるだけ
「だけ」と言ってもまぁ、結構深刻な問題ではあります。
子供の頃は確かに、自閉症スペクトラム特有の、人の表情や言葉から意図を読み取れないことで困りました。いつもよくわからない理由で急に怒られるものだから、ビクビクオドオドとしていました。
たぶん相手が爆発する前にその予兆的な何かを(優しい警告等)私に投げかけてくれていたのだろうけど、その時点でそれを理解出来ないためにしょっちゅう怒鳴られる羽目になっていました。
大きくなるにつれて、ちゃんとわかるようになります。ゆっくりではあっても、こういう言い方をしている時は優しい表情でもかなりイライラしていて怒る寸前なのだな、とか。
「かかとを踏まずにちゃんと上靴を履けないなら、もう履くな」
は、かかとまで上靴に収めてちゃんと履きなさい、という意味で、その場ですぐ上靴を脱ぐと先生が本気で怒ることも、小学校中学年くらいには理解しました。
大人になると、京都人の「ぶぶ漬けでも食べて行かはりますか(まだ帰らんのん?はよ帰れや)」のような言葉が世の中にたくさんあることがわかっているし、何度も失敗をするうちに掴んだパターンとして人の意図をかなり理解できるつもりでいます。
ただ、「パターンとして記憶→理解」しているだけなので、それは永遠に自動的に自分の「感覚」に取り込まれることはないように思います。
相手の言葉を聞く「いいのよ、後片付けの手伝いなんか。座ってゆっくりしていて」
↓
まずそのまま理解(手伝わなくていいのかぁ。私にゆっくりしていて欲しいのね)
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状況などを一度分析する(たくさん洗い物があるし、客とはいえ何かするべきでは?)
(でも手出ししてほしくないのかもしれない)(客に水回りを見られたくない可能性も)
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記憶を検索
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過去の経験を思い出す(これは「遠慮」というやつだった。「建前上」ひとはこういう場面で一度はこう言って断るのだ)
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現在の自分が取るべき態度を考える(何度も「いや、手伝う」と言って、それでも断られた場合に、手出ししてほしくないのかもという可能性のもと引き下がろう)
全手動。
上記の場面での、実際の私の行動は以下のようになります。
友人宅でランチをいただいた後、友人が立ち上がると同時に食器をキッチンに持って行くのを手伝おうと立ち上がる
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「手伝いなんかいいのよ、座ってゆっくりして」と言われ、それを受け入れて一度座る
↓
脳がフル回転して相手の言葉や表情、状況の分析を行っているためそのまま制止
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分析が完了し立ち上がってキッチンに向かう
↓
「手伝うよ」
友人は驚きます。何の時間差なのかわからず戸惑った表情を見せます。そこで、その表情を見た私の脳内はまたそれを分析し始めます。「あれ?私の判断は間違っているの?」と。そこでまた「あ、いつもの私の対応が遅れたせいで起こる『なんで今更?』という意味の表情か」と理解します。
今は、「手伝うよ」→拒否される→それでも「手伝わせて」と言う→友人なら3回程で引き下がる。姑(今はいませんが、離婚する前)なら100回断られても引き下がってはいけない。というふうにパターン化して覚えているので、「手伝うよシチュエーション」におけるコミュニケーションの滞りは起こりません。
ヒトは自動的に、意図を読み取る力というのを身に着けるらしいのですが、その能力を持って生まれなかった者は手動で身に着けるしかないのでスピードが圧倒的に遅いです。
今、自閉症と脳の関係の本をいくつか読んでいます。とても興味深いです。そういうものを読めば読むほど、定型発達のひとの脳という物がどれだけ高性能に出来ているのかということを知って感動します。すごいことが自動的に理解できるのだな!と憧れのピンクの溜息が漏れます。
脳!